
11C-Cyanation of Aryl Fluorides via Nickel and Lithium Chloride-Mediated C−F Bond Activation
Angew. Chem. Int. Ed. 2023, 62, e202302956. doi: 10.1002/anie.202302956.
寿命の短い炭素-11(半減期:約20.4分)を含むシアノ基を導入する新たな反応を開発しました。この手法では、化学的に安定で比較的合成しやすい芳香族フッ化物を前駆体として用います。この炭素–フッ素結合は非常に強固ではありますが、低原子価ニッケル錯体を作用させ、反応性に富んだアリールニッケル錯体へと変換することで、迅速な[11C]シアノ化が実現されました。本研究の途中で、炭素–フッ素結合の切断が加熱することなく起こることに驚き、計算化学を用いた詳細な検証も行いました。

Nat. Catal. 2021, 4, 1080–1088.
doi: 10.1038/s41929-021-00719-6. (open access) [press release, cover image, blog, Synfacts]
従来、塩基の添加が必須であった鈴木・宮浦クロスカップリング反応において、塩基の代わりにルイス酸を用いる斬新な手法を開発しました。NMR、放射光施設でのX線吸収分光(XAFS)、計算化学などの手法を駆使して中間体の構造を明らかにし、その反応機構を深く考察することで、「なぜ塩基がないのにこの反応が進行するのか」という疑問に対する仮説を提唱しました。

Bull. Chem. Soc. Jpn. 2023, 96, 283–290.
doi: 10.1246/bcsj.20220335. (open) [press release, cover image, BCSJ Award]
極めて複雑な化学構造を持つ抗がん剤エリブリンに、寿命が短いPET核種である炭素-11(半減期20.4分)を導入したPETプローブを開発しました。これをモデルマウスに投与することで、その動態の可視化に成功しました。 この論文は日本化学会が発行するBull. Chem. Soc. Jpn. 2023年3月号における最優秀論文(BCSJ Award Article)に選ばれました。